ヘ音記号のひとりごと

モノ多め、音多め。日々徒然なるままに生きていきたい。

カンタベリーコラールの苦悩

カンタベリーコラール、名曲ですが、普通のコントラバス弾きは毎回苦悩する曲でもあります。その理由は4弦楽器では出せない美味しすぎる最低音にあります。5弦楽器の方がこれほど羨ましく感じる瞬間はありません。

本日の駄文

年始から続いた異常な(?)高温もようやく治まってきましたね。寒くなってくるとようやく冬本番の気分になりますが、寒いの苦手だったことを思い出して朝ブルブル震えてみたりしますよね。でも冬の寒さはこうでなくっちゃ。身が引き締まってきちんと生活しなきゃって思います。

カンタベリーコラールの苦悩

先日、今年の弾き初めをしました。なんというか日頃からの練習不足はひどいもので演奏はそれはそれは身も蓋もない出来だったのですが、お屠蘇気分の合奏だったのでそれはそれでいいかな、と。初見大会だった今回の合奏ですが、その中の1曲にカンタベリーコラールがありました。ただただ懐かしいという気持ちと、相変わらず歯がゆい気持ちとでいっぱいになりました。なぜ歯がゆいか。それは「弦バス」の楽器構造にあります。

通常、コントラバスは4本の弦が張ってあります。普通のチューニングですと最低音はE。この曲は当然吹奏楽曲ですから♭が沢山ついた調で、Esが多用されます。実はこういったケース吹奏楽にはよくあって、意外と平気でEsが書いてあったりします。どうやって鳴らすんじゃ!?と思いながら、しょうがないので自己満足のためにE線を半音下げてチューニングしたりするんですけど。(当然ながらE線だけポジション変わりますので頭を使いながらフィンガリングするハメになります)

で、このカンタベリーコラールはそれだけにはとどまらず、曲が一番盛り上がるところで下降系の音程の後、最低音でCが出てきます。このCは4弦の楽器で表現するのはほぼ不可能で、5弦装置を搭載した楽器(E線の隣に1本低音用の弦を張る専用装置)か、5弦の楽器が必要になります。しかしながらこの最低音Cは本当に重要で、奏者にとってはまさに絶頂、至福の瞬間なんです。わざわざこの音を弾きたいがために5弦の楽器を欲しいと言っても過言ではないくらい。古くはベートーベン先生がいた頃は5弦前提で曲が書かれていたりするため、本当に素敵にこの音が出てきます。そしてその最低音Cは「宇宙を感じる音」と言われてしまうほどの素敵な魅力があるのです。

だったら最初から5弦の楽器を買えばいいじゃん、と思う方多いと思いますが、この5弦楽器、4弦楽器に比べて音が暗く重くなりがちです。指板も大きくなるため運動性も低くなります。プロ奏者は2台持ち(つーか何本も)持つ方が多いのですが、アマチュアの私はとても手が出ません。アメリカ方面では5弦装置が流行っているみたいですけど、5弦の楽器で弾きたいんです。やっぱり私は。何度か5弦の楽器にも触れたことがありますが、基礎練習しててもC線の音は太く深くロマンがあります。いいよねぇ。(→もはやおかしい人)

普通の4弦楽器で演奏する場合は、通常はオクターブを上げて対応するんですよ。まぁそれで殆どの場合は問題ないのですが、それでも、めくるめくCの世界は一度味わうと抜け出せなくなる、というお話でした。

レジェンダリーコレクションズ

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カンタベリーコラールを世に広めるきっかけとなった伝説が、関東一高のコンクール全国大会での演奏。まさかまさかのコンクール自由曲でのコラール演奏はとんでもない反響がありました。当時の学生さんたちは1音づつ音程を全部合わせてコンクールに臨んだそうで、それはそれでものすごい情熱を感じます。一夏これで越すのは私にはとても無理。それだけにこの演奏の底知れぬ素晴らしさを感じるのです。